
作品タイトル「衆」の一部です。
アートは見る人が感じるもので説明などいらないのかもしれません。
しかし今回の私の作品は明らかに表現したい背景があるので書く事にしました。
今年初め映画館で「スノーデン」という映画が上映されました。
私はその前に「シチズンフォースノーデンの暴露」というDVDを見たのです。
アメリカ政府による個人情報監視の実態を暴いた元CIA職員エドワード・スノーデンのドキュメント映画で、あまりにも衝撃が大きすぎて心の整理がつきませんでした。
パソコン画面上には小さなカメラがついています。
私達は自分の操作でカメラ機能を使うと思っていますが映画ではそこから逆に盗撮されさらにメール等の膨大な通信データが秘密裏に集められていたのです。個人情報が監視され、日本もアメリカの監視下なのです。
その現実を暴露したスノーデンはアメリカから逃亡し今も帰る事はできません。
この状況を作品化したいと思い『衆』という文字に取り組みました。
白川静の辞典では、口は都市を囲む城郭の形、下に三人が並んで立つ形とあり、金文では上部が目の形になるとありました。
私の作品では目の部分を違う形で表現しています。
視線の奥で人は何を企みどのような意識で監視しているのか不気味な気配と滑稽さの下で大衆はうつむいています。
今やアートもデータで保存され世界を飛び回っている時代です。
情報の飛び交うネット社会を恐れ敬遠するのではなく共存し楽しむ道を探したいと思います。
それでも書は原画を見るべきです。
今回の展示では墨の黒の美しさ、和紙の風合い、線の勢い、作品の響き合い
文字に込められたメッセージ等、何か一つでも感じていただけたら嬉しいです。